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現代静的会計論

五十嵐 邦正 著


第1刷発行日1999/04/20
判型A5判
ページ数608ページ
本体価格6,500円
定価
在庫状況在庫あり
ISBN978-4-8394-1889-2
内容
 近年の会計思考を形成するのは主に動態論であるが、それだけでは貸借対照表の説明は不十分であり、別の角度からそれを補完する点に静態論の重要な意義がある。本書はドイツ貸借対照表法を中心に論じた。

目次
第1部 ドイツ貸借対照表法と静的会計
(Ⅰ)貸借対照表法

第1章 デレーラーの貸借対照表法論
 第1節 貸借対照表法解釈の発展
  1 序
  2 1965年株式法と貸借対照表解釈
   (1) 商事貸借対照表の性格
   (2) 固定資産および流動資産の評価
   (3) 計算限定項目
   (4) 引当金
   (5) 1965年株式法上の貸借対照表解釈
  3 法的意味における貸借対照表の性格
   (1) 法的会計報告の意味
   (2) 貸借対照表真実性と債権者保護
   (3) 貸借対照表の表示内容
   (4) 貸借対照表に対する法的考察方法と経済的考察方法
  4 貸借対照表指令法に基づく商事貸借対照表と税務貸借対照表
   (1) 基準性の原則
   (2) 積極計上
   (3) 消極計上
   (4) 貸借対照表指令法の性格
  5 デレーラー所説の特質と意義
   (1) デレーラー所説の特質
   (2) デレーラー所説の意義
 第2節 商事貸借対照表と税務貸借対照表
  1 序
  2 商事貸借対照表
   (1) 貸借対照表計上
   (2) 評価
  3 税務貸借対照表
   (1) 基準性原則
   (2) 貸借対照表計上
   (3) 評価
   (4) 逆基準性
  4 デレーラーによる貸借対照表法の評価
  5 デレーラー所説の検討

第2章 バイセの貸借対照表論
 第1節 ドイツ貸借対照表法と経営経済学
  1 序
  2 基本的立場
   (1) 出発点―シュナイダー批判
   (2) 貸借対照表法に対するアプローチ
   (3) 貸借対照表法の体系
  3 商事貸借対照表法
   (1) GoBの法律性格
   (2) GoBの形成
   (3) シュナイダー見解の検討
  4 税務貸借対照表法
   (1) 法制度としての税務貸借対照表法
   (2) 基準性原則と経済的考察方法
  5 貸借対照表法と経営経済学
   (1) 法学と経済学
   (2) 法的考察方法と経営経済的考察方法
   (3) 学際的な協力
  6 バイセ所説の特徴と意義
   (1) バイセ所説の特徴
   (2) バイセ所説の意義
 第2節 ドイツ貸借対照表法の体系
  1 序
  2 旧貸借対照表法の体系
   (1) 旧貸借対照表法とGoB
   (2) 旧貸借対照表法における体系化の方向
  3 現行貸借対照表法における外部的体系
   (1) 外部的体系の概念
   (2) 外部的体系の概要
  4 現行貸借対照表法における内部的体系
   (1) 内部的体系に対する捉え方
   (2) GoBの内部的体系
   (3) 税務貸借対照表法における内部的体系
  5 貸借対照表法の諸規定
   (1) 測定規定
   (2) 情報規定
  6 バイセの貸借対照表法構造
  7 バイセ所説の特徴と意義
   (1) バイセ所説の特徴
   (2) バイセ所説の意義

第3章 ドイツ貸借対照表法と利益測定
 第1節 モックスターの所説
  1 序
  2 モックスターの視角
  3 貸借対照表法における利益測定と動態論
   (1) 連邦最高裁判所判決と経営経済的考察方法
   (2) 動態論の主な特徴
   (3) 1950~60年代における貸借対照表法と動態論
  4 動態論から分配静態論への展開
   (1) 経営経済学の新方向
   (2) 法律事情の変化
   (3) 分配静態論の展開とその特徴
  5 貸借対照表法研究のあり方
   (1) 学際的研究の要請
   (2) 貸借対照表法の体系
  6 モックスター所説の特質と問題点
   (1) モックスター所説の特質
   (2) 問題点
   (3) モックスター所説の意義
 第2節 シュナイダーの所説
  1 序
  2 シュナイダーの出発点
  3 シュマーレンバッハ解釈の検討
   (1) 初期の段階における問題点
   (2) ビランツシェーマに関する問題点
   (3) 稼得利益と分配可能利益の区別に関する問題点
   (4) 利益概念の問題点
   (5) 企業の全体価値としての財産測定に関する問題点
   (6) 矛盾を認識できなかった問題点
   (7) 二元論に関する問題点
  4 法的貸借対照表の生成と性格
   (1) 法的貸借対照表の起点としてのローマ法
   (2) 貸借対照表法の発展と期間利益計算
  5 純粋の経営経済的貸借対照表と19世紀の貸借対照表法の性格
   (1) 純粋の経営経済的貸借対照表の特徴
   (2) 19世紀におけるドイツ貸借対照表法の検討
  6 貸借対照表法と経営経済的貸借対照表論
  7 シュナイダーによる貸借対照表法解釈の特質と意義
   (1) シュナイダー所説の特質
   (2) シュナイダー所説の意義

第1部 ドイツ貸借対照表法と静的会計
(Ⅱ)商事貸借対照表

第4章 商事貸借対照表の歴史的発展
 第1節 ドイツ貸借対照表法の発展と貸借対照表観
      ―オーバーブリンクマンの諸説―
  1 序
  2 オーバーブリンクマンの基底―貸借対照表法に対する3つの視点
  3 貸借対照表法の生成と貸借対照表観
   (1) 1673年フランス商事勅命
   (2) 1861年普通ドイツ商法
   (3) 静態論および動態論の発展区分
  4 貸借対照表法と静態論の発展
   (1) 古典的静態論の発展段階
   (2) 近代的静態論の発展
  5 貸借対照表法と動態論の発展
   (1) 古典的動態論の発展段階
   (2) 貸借対照表法と近代的動態論
  6 オーバーブリンクマン所説の評価
 第2節 ドイツ商事貸借対照表法の歴史的発展とそのあり方
      ―シェーンの所説―
  1 序
  2 ドイツ商事貸借対照表法の生成―1861年普通ドイツ商法
   (1) 普通ドイツ商法の会計規定
   (2) 商業帳簿の証拠機能
   (3) 商業帳簿による破産防止機能
   (4) 商業帳簿の利益分配機能
   (5) 財産評価と商法規定の目的
  3 分配禁止を中心とした企業会計法の生成
  4 企業会計法としての税務所得計算
  5 貸借対照表法におけるGoBの登場
  6 貸借対照表法と動的貸借対照表論
  7 貸借対照表における株主保護と秘密積立金の設定
  8 EC会社法第4号指令と貸借対照表指令法
  9 ドイツ貸借対照表法に対する国際会計基準およびアメリカ会計基準の影響
   (1) ドイツの会計基準とアメリカの会計基準の相違
   (2) 両者の妥協的解決方法とその問題点
   (3) シェーンの提案―情報貸借対照表と分配貸借対照表の作成
  10 シェーン所説の特質とその評価
   (1) シェーン所説の特質
   (2) シェーン所説の評価

第5章 ドイツ商法における債権者保護思考
 第1節 ドイツ商法における債権者保護思考
      ―キューブラーの所説―
 Ⅰ ドイツ債権者保護思考とアメリカ資本市場情報思考
  1 序
  2 企業会計法と債権者保護思考
   (1) ドイツ法
   (2) アメリカの会計基準
   (3) 両基準の根本的相違
  3 両会計基準の調和化に対する可能性
   (1) 調和化の方向
   (2) 秘密積立金の処理
   (3) 秘密積立金とインサイダー取引
  4 キューブラー所説の検討
   (1) キューブラー所説の特質
   (2) キューブラー所説の評価
 Ⅱ 制度的債権者保護から情報的債権者保護へ
  1 序
  2 制度上の債権者保護に関する現状
   (1) 貸借対照表法における債権者保護
   (2) アメリカの資本会社における債権者保護
   (3) 貸借対照表法の国際的調和化
  3 債権者保護に対する制度上のあり方
   (1) アメリカの新たな債権者保護思考の優位性
   (2) 有用な会計情報と債権者保護
  4 秘密積立金,インサイダー取引の禁止と特別な開示
   (1) インサイダー取引の禁止と秘密積立金
   (2) 秘密積立金の開示
  5 キューブラー所説の特質と評価
   (1) キューブラー所説の特質
   (2) キューブラー所説の評価
 第2節 基本原則としての債権者保護思考
      ―バイセの所説―
  1 序
  2 債権者保護思考に対する批判
  3 債権者保護原則とGoB
   (1) GoBの性格とその内容
   (2) GoBシステムの構造と税法
  4 ドイツ貸借対照表法の特質
   (1) 法規範としてのGoB
   (2) 倫理と経済上の意味づけ
   (3) 商事貸借対照表法と税務貸借対照表法との結合
  5 債権者保護思考に対する内外の動向
   (1) ドイツ貸借対照表法自体での批判的見解
   (2) 諸外国との関係
  6 バイセ所説の特質と評価
   (1) バイセ所説の特質
   (2) バイセ所説の評価
 第3節 ドイツ商法の債権者保護規定と国際会計基準
      ―ストローブルの所説―
  1 序
  2 国際会計基準とドイツ会計基準の目標
   (1) 国際会計基準の会計目的
   (2) ドイツ会計基準の会計目的
  3 両会計基準の具体的な相違点
   (1) 貸借対照表項目の計上基準
   (2) 貸借対照表項目の評価基準
   (3) 自己資本と利益への影響
  4 ドイツの債権者保護思考に対する国際会計基準の影響
   (1) 貸借対照表法の一部としての債権者保護規定
   (2) 国際会計基準の導入における債権者保護のあり方
  5 ストローブル所説の検討
 第4節 債権者保護と財産対象物概念
      ―ティードシェンの所説―
  1 序
  2 基本的立場
  3 財産対象物概念に対する従来の見解
   (1) 取引可能性
   (2) 独立した換金性
  4 財産対象物の概念とGoB
   (1) GoBに基づく財産対象物の規定
   (2) ティードシェンのGoB解釈
  5 財産対象物の概念規定
   (1) 財産表示手段としての貸借対照表と財産目録
   (2) 財産目録の機能と目的
   (3) 債権者保護に基づく財産対象物の概念規定
   (4) 財産対象物に関する追加的メルクマールの検討
   (5) 財産対象物の範囲
  6 ティードシェン所説の特質
   (1) ティードシェン所説の特質
   (2) ティードシェン所説の問題点
   (3) ティードシェン所説の意義

第6章 ドイツ貸借対照表法における計算基準
 第1節 実現原則
 Ⅰ モックスターの所説
  1 序
  2 実現原則の論点
  3 実現原則の論拠
   (1) 1884年株式改正法と実現原則
   (2) 1985年商法と実現原則
  4 実現原則の意味
   (1) 実現原則と取得原価原則
   (2) 実現原則と期間限定原則
  5 実現原則の問題点
   (1) 実現原則と経営経済的立場
   (2) 実現原則と税務上の立場
  6 モックスター実現原則の特徴とその検討
 Ⅱ ジーゲルの所説
  1 序
  2 商法における期間画定問題
  3 実現原則に対する二つの立場
   (1) 通説とモックスター説との対立
   (2) 実現原則の目的とその内容
  4 二つの実現原則解釈に関する相違点
   (1) 減価償却費
   (2) 生産物の全部原価と部分原価
   (3) 適応義務引当金
   (4) アフターサービス引当金
   (5) 再整備および再廃棄物引当金
  5 二つの実現原則解釈とジーゲルの所説
  6 ジーゲル所説の検討
 第2節 対応原則
 Ⅰ ストローブルの所説
  1 序
  2 アメリカを中心とした対応原則
   (1) アメリカにおける対応原則
   (2) イギリスにおける対応原則
   (3) 国際会計基準における対応原則
   (4) 対応原則の特質
  3 ドイツ貸借対照表法における対応原則
   (1) EC会社法第4号指令における対応原則
   (2) ドイツ商法第252条1項5号における期間限定原則の意味
   (3) 計算限定項目
   (4) 積極計上
   (5) 債権債務の為替換算
   (6) 引当金
  4 ストローブル所説の特質とその評価
   (1) ストローブル所説の特徴
   (2) ストローブル所説の問題点
   (3) ストローブル所説の評価
 Ⅱ モックスターの所説
  1 序
  2 引当金に関する論点
  3 実現原則に対する批判的見解
   (1) 民法構造に基づく方向
   (2) 民法構造の抑制的方向
  4 引当金と実現原則
   (1) 将来の支出と実現収益との直接的対応
   (2) 将来支出と将来収益との直接的な対応
   (3) 実現原則と相殺の禁止・用心の原則・完全性の原則との関係
   (4) 将来支出と実現収益との間接的対応
  5 モックスター所説の特徴
   (1) モックスター所説の特徴
   (2) モックスター所説の検討
 第3節 不均等原則
      ―ブュシュテマンの所説―
  1 序
  2 二つの静態論
   (1) 時価静態論
   (2) 分配静態論
  3 具体例としての静態論
   (1) 部分価値
   (2) 偶発損失引当金
   (3) 財産測定原則と利益測定原則
  4 不均等原則と静態論
   (1) 不均等原則と時価静態論
   (2) 不均等原則と分配静態論
  5 ブュシュテマン所説の評価

第1部 ドイツ貸借対照表法と静的会計
(Ⅲ)税務貸借対照表

第7章 ドイツ税務貸借対照表における静態論的思考
 第1節 アイベルスホイザーの所説
  1 序
  2 1969年所得税法改正前における連邦財政裁判所の動態論的傾向
  3 1969年所得税法改正以降における連邦財政裁判所の静態論的傾向
   (1) 引当金の静的解釈
   (2) 積極計算限定項目の静的解釈
  4 連邦財政裁判所の判例における静態論思考の意味
  5 アイベルスホイザー所説の検討
 第2節 グローの所説
  1 序
  2 1970年代における税務貸借対照表の動向
   (1) 商事貸借対照表の特質
   (2) 税務貸借対照表における静態論的思考
  3 1985年商法制定以降における税務貸借対照表の動向
   (1) 1985年商法の概要
   (2) 引当金の解釈
   (3) 税務貸借対照表への影響
  4 むすび―グロー所説の評価

第8章 税務貸借対照表判例における計算基準
 第1節 1985年商法以前の計算基準
      ―モックスターの所説
  1 序
  2 資産の計上基準
   (1) 基準性原則
   (2) 実現原則
   (3) 客観性原則
   (4) 積極計算限定項目
  3 負債の計上基準
   (1) 基準性原則
   (2) 実現原則
   (3) 客観性原則
   (4) 消極計算限定項目
  4 モックスターによる税務貸借対照表法解釈の評価
   (1) 適正な期間利益の測定
   (2) 損失見越原則
   (3) 客観性原則
  5 モックスター所説の特徴と評価
   (1) モックスター所説の特徴
   (2) 問題点
   (3) モックスター所説の評価
 第2節 1985年商法制定後の計算基準
      ―モックスターの所説―
  1 序
  2 積極計上基準
   (1) 経済財基準
   (2) 無形固定資産の特殊性
   (3) 経済財への参入
   (4) 利益実現時点
   (5) 積極計算限定項目
  3 負債計上基準
   (1) 債務概念
   (2) 負債の算入時点
   (3) 偶発損失引当金
   (4) 消極計算限定項目
  4 評価基準
   (1) 財産対象物の取得原価
   (2) 財産対象物の製造原価
   (3) 負債の取得原価と製造原価
   (4) 固定資産の損耗控除
   (5) 部分価値
  5 モックスターによる貸借対照表判例に関する評価とその検討
   (1) 貸借対照表判例とモックスター学説
   (2) モックスター所説の検討

第2部 静的会計の種々相

第9章 財務会計と静的会計
 第1節 精算表と会計思考
  1 序
  2 アメリカにおける精算表
   (1) 19世紀における精算表
   (2) 20世紀以降の精算表
  3 ドイツ語圏における精算表
   (1) 1910年代における精算表
   (2) 1920年代以降における精算表
  4 結
 第2節 未履行契約と静態論思考
      ―ローズの所説―
  1 序
  2 未履行契約と意思決定アプローチ
   (1) さまざまな論者の主張
   (2) 確定性原則の問題点
  3 未履行契約と財産権アプローチ
   (1) 資源,資産と財産権との関係
   (2) 意思決定の有用性とコントロール
  4 契約上の財産権の評価に関する剝奪価値の適用
   (1) 剝奪価値
   (2) 剝奪価値と未履行契約のコミットメントの決定
   (3) 為替予約取引および建物購入契約締結に対する適用
  5 ローズ所説の評価
 第3節 貸借対照表における資本在高計算
  1 序
  2 資本在高計算の内容
   (1) 資本在高計算の意味
   (2) 資本在高計算の種類
  3 制度会計と資本在高計算
   (1) 貸借対照表の作成基盤と資本在高計算
   (2) 貸借対照表能力と資本在高計算
   (3) 貸借対照表評価と資本在高計算
  4 非制度会計と資本在高計算
  5 結
 第4節 財務会計の動向と静態論思考
  1 序
  2 財務会計の動向
   (1) わが国の財務会計の動向
   (2) 国際的な財務会計の動向
   (3) 財務会計と静態論
  3 貸借対照表能力論と静態論
   (1) 資産および負債の具体性としての客観性原則
   (2) 資本在高計算
   (3) 未履行契約と静態論
  4 貸借対照表評価論と静態論
   (1) 二元的資産評価論における加算の意味と問題点
   (2) 二元的資産評価と貸借対照表の表示内容
  5 結
 第5節 実現原則と資産処分計算
  1 序
  2 モックスターの実現原則から学ぶもの―資産処分計算の構想
   (1) 一期間における資産処分計算
   (2) 企業の存続期間に関する資産処分計算
   (3) 解散企業における資産処分計算
  3 資産処分計算に関する計算基準
   (1) 解散企業における資産処分計算
   (2) 継続企業における資産処分計算
  4 静的会計論の範囲

文献
索引