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減損会計 増補版
―配分と評価―

米山 正樹 著


第1刷発行日2003/12/20
判型A5判
ページ数276ページ
本体価格3,500円
定価
在庫状況品切
ISBN978-4-8394-1982-0
内容
 一貫した検討課題は、減損とは何か、減損と呼ばれる事象が生じたとき、原価配分の対象となっている財の簿価をどういうタイミングでどれだけ切り下げるのか、それはなぜなのかを論述する。

目次
第1章 期待にもとづく業績評価
 第1節 はじめに
 第2節 投資に寄せられた期待と成果のとらえかた
  (1) 「期待」が意味するもの
  (2) キャッシュフローの獲得と原価配分のスキーム
  (3) 有利な価格変動への期待と価値評価のスキーム
  (4) 財の物理的な特性とそこから期待される成果
  (5) 原価配分のスキームに固有の困難
 第3節 原価配分の意義と特徴
  (1) 資本設備に係る原価配分
  (2) 配分計画に織り込まれる期待(見積もり)の要素
  (3) 配分計画には織り込まれない期待(見積もり)の要素
  (4) 小括
 第4節 期待の変化と業績評価スキームの修正
  (1) 耐用年数の見積もりに係る修正
   ① 意義と必要性
   ② 最低限満たすべき配分規約への抵触による簿価修正
 第5節 おわりに
 補論 のれんの喪失という形をとる見積もりの修正
  (1) 原価配分から価値評価への移行
  (2) 具体的な手続―時価への簿価修正―

第2章 金銭債権に係る配分計画の修正
 第1節 はじめに
 第2節 債権投資に係る成果のとらえかた
  (1) 配分手続による業績評価
   ① 満期保有が予定されている理由
   ② 満期保有目的と原価配分のスキーム
  (2) 期待される成果の質的な相違
   ① 期待される成果の実現形態
   ② 営業努力が必要とされるタイミング
  (3) 金銭債権と利息法(interest method)
   ① 利息法の概要
   ② 利息法が適用される理由
 第3節 金銭債権に係る配分計画の修正
  (1) 現行ルールで求められる修正手続―FASB基準書第114号―
   ① 基準書第114号の概要―「当初の実効金利」による割引現在価値―
   ② 修正手続の意義―規約への抵触を避けるためという解釈をめぐって―
  (2) 配分規約への抵触を避けるためのさまざまな修正手続
   ① prospective approach
   ② retroactive approach
   ③ catch-up approach
   ④ 小括
  (3) 修正手続に係る米国ルールの変遷
   ① prospective approachによる基準書第15号
   ② 基準書改訂の理由:貸し手による損失回避行動の排除
   ③ 基準書改訂の理由:正常な債権との整合性
   ④ 小括
  (4) 債権投資の継続性と当初の実効金利による簿価修正
   ① 変わらない最善の選択肢
   ② その他の事業資産への応用
 第4節 おわりに
 補論 投資に寄せられた期待の「さまざまな変質」
  (1) 債権の譲渡が最善の選択となる場合
  (2) 資金回収に追加的な努力が求められるようになる場合
  (3) 原価回収法などへの移行に伴う簿価の切り下げ

第3章 棚卸資産に係る配分計画の修正
 第1節 はじめに
 第2節 棚卸資産に係る成果のとらえかた
  (1) 原価配分による業績評価
   ① 売却目的での保有―金融資産たる有価証券との異同点―
   ② 販売の事実に着目した業績評価―キャッシュフローの獲得―
  (2) 期待される成果の質的な相違
  (3) 取得原価の据え置き―棚卸資産に固有の原価配分―
 第3節 棚卸資産に係る見積もりの修正
  (1) 期間損益志向の修正手続としての低価基準
   ① ふたつの異質な活動から期待される成果
   ② 「全体としての失敗」と「部分的な成功」
   ③ 旧来どおりの事業活動から期待される成果の分離把握
   ④ 簿価の具体的な修正手続
   ⑤ 小括:低価基準をめぐる解釈
  (2) 伝統的な解釈に見られる等質的な発想―有用性の喪失―
  (3) 新たなインプリケーション
   ① 損傷品と時価下落
   ② 強制評価減の存在
   ③ ポートフォリオ低価法の存在
 第4節 おわりに

第4章 資本設備に係る配分計画の修正(1)
 第1節 はじめに
 第2節 過剰な投資額を切り捨てるための修正手続
  (1) 過剰な投資の切り捨てを支える基本思考
  (2) 投資の成否にかかる判断規準―遡及的な見積もりの必要性―
  (3) 資本設備に係る具体的な切り下げのタイミング
   ① 想定可能な選択肢
   ② 選択肢の対比
  (4) 資本設備に係る切り下げ額の大きさ
   ① 正常な利益の確保―償却ベースの切り下げ―
   ② 「見積もり直した取得原価」を償却ベースとした簿価修正
   ③ 棚卸資産に求められる修正手続との整合性
   ④ 技術的な制約への配慮
 第3節 臨時償却との相違
  (1) 伝統的な修正手続:臨時償却とは
  (2) 過大な償却負担の切り捨てとの併存―両者がともに必要な理由―
  (3) ふたつの手続の使い分け
  (4) 小括
 第4節 おわりに

第5章 資本設備に係る配分計画の修正(2)
      ―対案との比較―
 第1節 はじめに
 第2節 事実上の再投資を契機とする簿価修正―FASB基準書第121号―
  (1) 考え方の概要
  (2) この考え方に対する評価
   ① 収益力が低下しなくても擬制しうる「事実上の再投資」
   ② 収益力の低下を契機とする簿価「切り上げ」の可能性
 第3節 回収可能額への抵触を契機とする簿価修正―IAS第36号―
  (1) 考え方の概要
  (2) この考え方に対する評価
   ① 減価償却に係る基本的な前提との矛盾
   ② 債権利息に係る期間配分との矛盾
   ③ 小括
 第4節 おわりに
 補論1 配分規約への抵触以外を契機とした修正の排除
  (1) 考え方の概要
  (2) この考え方に対する評価
 補論2 いったん計上した評価損失の戻入
  (1) 問題の所在―多様な見解の存在―
  (2) 投資の成否に係る判断の訂正と評価損失の戻し入れ
 補論3 回収可能性の喪失なき切り下げ
  (1) 問題の所在
  (2) 全体としての収益力に着目した簿価修正
  (3) 成果と犠牲との対応関係をめぐる「混乱」

第6章 事業用不動産に係る配分計画の修正
 第1節 はじめに
 第2節 配分計画を修正する論拠
  (1) 取得原価の据え置き―特殊な原価配分―
  (2) 期間損益の正常性を取り戻す手続の要否
   ① 必然性の乏しい簿価の切り下げ
   ② 棚卸資産との異同点
  (3) 異質な視点から切り下げを論拠づける試み
 第3節 具体的な切り下げの手続
 第4節 おわりに

第7章 買い入れのれんに係る配分計画の修正
 第1節 はじめに
 第2節 買い入れのれんに係る業績評価
  (1) 買い入れのれんの意義と特質
  (2) 買い入れのれんに係る業績評価
 第3節 買い入れのれんに係る見積もりの修正
  (1) 必要とされる修正手続の概要
   ① 配分規約への抵触を避けるための修正
   ② 期間損益に経験的な解釈を与えるための修正
  (2) 買い入れのれんの切り下げと有形財の切り下げ
   ① 基本的な測定操作―単一の現金生成単位しか存在しない場合―
   ② もうひとつのやりかた―その問題点―
   ③ 切り上げの形をとる簿価修正の可能性
   ④ 複数の現金生成単位が存在する場合への拡張
  (3) 一括取得した財の部分的な売却
 第4節 おわりに

終章 原価配分のもとでの「再評価」―簿価修正の意義―
 第1節 要約と合意
  (1) 基本的な問題意識
  (2) 準拠枠:金銭債権に求められる簿価修正
  (3) 棚卸資産に係る簿価修正
  (4) 資本設備の減損処理
   ① ストック志向の修正手続という解釈にみられる問題点
   ② 期間損益志向の修正手続
  (5) 事業用不動産に係る簿価修正
  (6) 買い入れのれんに係る簿価修正
  (7) 含意―期間損益志向の修正手続―
 第2節 残された課題と今後の展望
  (1) 追加的な簿価切り下げの必要性に係る代替的な見解
  (2) 金銭債権の簿価切り下げをめぐる代替的な解釈
  (3) 「ふたつの修正手続」を統合する説明原理の模索
  (4) 期間損益の経験的な解釈を取り戻すための測定操作

補章 経営者のパフォーマンス評価と事業資産の再評価
 第1節 はじめに
 第2節 ストックの再評価と経営者の行動
  (1) 「発生主義会計における固定資産の再評価」(Grinyer[1987])
  (2) 「経営者の交替」による再評価と経営者の行動
  (3) 「投資の変質」による再評価と経営者の行動
 第3節 おわりに

補遺1 配分と評価との「融合」―明確さを失った両者の境界―
 第1節 はじめに―問題の所在―
 第2節 相互に関連しあう配分と評価
  (1) 「表面上」対立しあう配分と評価―固定資産に係る減損処理のケース―
  (2) 「評価の手続」をつうじた期間損益の経験的な意味づけ
   ① 金融資産の時価評価
   ② 退職給付費用の会計
   ③ 資産の除却に伴う債務の会計
  (3) 配分の枠内での対立―固定資産に係る減損処理の根底にあるもの―
  (4) 融合しあう配分と評価―両者の関係についての歴史的な変遷―
   ① 評価の手続による配分手続の補完―FASBなどの動向―
   ② 評価の手続に係る信頼性の向上
   ③ 会計情報に求められる質的特性の変化―財務報告の目的と関連づけて―
  (5) 配分と評価という対立構造自体の存否―より根本的な問いかけ―
 第3節 整合性の影で生み出された「非整合性」
  (1) 見積もり要素の拡大
  (2) グルーピングの必要性
   ① 内的な整合性を保つためのグルーピング
   ② 既存のルールに起因する「非整合性」とその解決
 第4節 おわりに

補遺2 臨時償却の変質―減損処理とその周辺―
 第1節 はじめに
 第2節 減損処理と臨時償却との役割分担
  (1) 「償却ベースの修正」と「償却不足(過剰)額の修正」
  (2) 図表による説明
 第3節 臨時償却による代替の限界
  (1) 償却基準の変更による対応とその限界
  (2) 耐用年数の変更による対応とその限界
  (3) 減損処理の必要性
 第4節 臨時償却の変質とその派生的な影響
  (1) 償却基準の変更と耐用年数の修正の等質性
  (2) 将来修正と遡及修正を併用する必要性
 第5節 おわりに

参考文献
索引