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監査期待ギャップ論

吉見 宏 著


第1刷発行日2005/03/25
判型A5判
ページ数196ページ
本体価格2,500円
定価
在庫状況在庫あり
ISBN978-4-8394-2004-8
内容
 監査期待ギャップ問題は、20世紀後半の会計専門職と、学問としての監査論を揺るがし続けた問題であり、いまだ解決されていない。本書は新たな展開と理論を解明し、その将来を俯瞰する。

目次
第Ⅰ部 監査期待ギャップ問題の認識

第1章 監査期待ギャップ問題の認識
     ―コーエン委員会報告書―
 1 はじめに
 2 コーエン委員会報告書における監査期待ギャップの認識
 3 コーエン委員会報告書の結論と勧告
  (1) 社会における監査人の役割
  (2) 財務諸表に対する意見の形成
  (3) 財務諸表上の重要な未確定事項に関する監査報告
  (4) 不正の発見に対する責任の明確化
  (5) 企業の会計責任と法
  (6) 監査人の役割の境界とその拡張
  (7) 監査人から利用者への伝達
  (8) 監査人の教育,訓練および能力開発
  (9) 監査人の独立性の維持
  (10) 監査基準の設定過程
  (11) 監査実務の品質を維持するための専門職の規制
 4 おわりに
     ―コーエン委員会報告書の意義―

第2章 不正と監査の歴史的連関
     ―監査期待ギャップはなぜ生じたのか―
 1 はじめに
 2 原初的形態の監査
 3 資本の集中と監査目的の変化
 4 おわりに
     ―準拠性の重視と監査人に対する訴訟―

第3章 欧米における監査期待ギャップ問題の萌芽
     ―企業不正事例と訴訟―
 1 はじめに
 2 アメリカにおける企業不正と訴訟
     ―コーエン委員会報告書以前にみる監査期待ギャップ問題―
  (1) ウルトラマーレス事件
  (2) マッケソン・ロビンス事件
  (3) バークリス事件
  (4) コンチネンタル・ベンディング・マシン事件
  (5) エール・エクスプレス事件
  (6) エクイティ・ファンディング事件
 3 イギリスにおける企業不正と訴訟
  (1) カパロ・インダストリー事件
  (2) ポリー・ペック・インターナショナル事件
  (3) BCCI事件
  (4) マックスウェル事件
 4 英米における監査期待ギャップ問題の認識と対応
  (1) アメリカおよびカナダにおける認識と対応
  (2) イギリスにおける認識と対応
 5 おわりに

第4章 日本における監査期待ギャップ
 1 はじめに
 2 1991年の監査期待ギャップ調査
  (1) 調査の概要と背景
  (2) 調査結果の検討と概観
  (3) 調査結果の日英比較
   ① 不正の発見・防止
   ② 社会的責任
   ③ 監査人の独立性
   ④ 監査人の責任範囲の限定
   ⑤ 日英比較の総括
 3 その他の監査期待ギャップに関わる調査
  (1) 1998年の公認会計士に対する期待の調査
  (2) 2002年の会計専門職による外部監査についての意識調査
  (3) 2003年の会計専門職の倫理に関する調査
 4 企業不正事例からみた監査期待ギャップ
 5 無期待ギャップ
  (1) 日本における「無期待ギャップ」の可能性と期待の形成
  (2) 証券金融市場改革と監査に対する期待の形成
 6 おわりに

第Ⅱ部 監査期待ギャップ問題の論理と展開

第5章 監査期待ギャップ問題の本質
 1 はじめに
 2 監査期待ギャップの分析と拡大
     ―先行研究の検討―
  (1) マクドナルド委員会報告書
  (2) 会計期待ギャップ
  (3) 「時間的ずれ」による期待ギャップと近代的期待ギャップ
  (4) 監査期待ギャップの拡大と先行研究の総括
 3 監査期待ギャップ問題の監査構造的理解
  (1) 会計監査の原初的形態
  (2) 監査構造と期待ギャップ
 4 おわりに

第6章 日米における監査期待ギャップ問題への対応
     ―コーエン委員会報告書以降―
 1 はじめに
 2 トレッドウェイ委員会報告書
 3 期待ギャップに関わる監査基準書
  (1) 9つの「期待ギャップ基準書」
  (2) SAS No.82
  (3) SAS No.99
 4 監査基準以外の監査期待ギャップ,企業不正問題への対応
 5 日本における監査基準の改訂
 6 「会計不信」と監査期待ギャップ
 7 おわりに

第7章 中間監査と監査期待ギャップ問題
 1 はじめに
 2 中間監査の特殊性と普遍化の可能性
 3 中間監査基準と「中間監査」の特徴
  (1) 中間監査の特徴
  (2) 中間財務諸表監査と中間監査
  (3) 専門職の実務指針への依拠
 4 旧中間財務諸表監査における監査人の責任事例
  (1) 雅叙園観光
  (2) 日本債券信用銀行
  (3) 日本国土開発
 5 おわりに
     ―監査人の責任と監査期待ギャップ―

第8章 環境監査と監査期待ギャップ問題
 1 はじめに
 2 実務からみた環境監査
  (1) 内部監査としての環境監査
  (2) 外部監査としての環境監査
 3 理論からみた環境監査
  (1) 第三者報告書
  (2) ISO14000シリーズ上の「監査」
 4 おわりに
     ―環境監査の監査性と環境監査期待ギャップの可能性―

第9章 無形項目の監査の可能性と監査期待ギャップ問題
 1 はじめに
 2 無形項目の監査の形態
 3 「無形」の項目の監査不法
 4 「有形」項目の無形項目化
 5 無形項目の監査へ向けて
 6 ブランドの監査
  (1) モデルによる価値評価と監査
  (2) ブランド価値評価モデルに利用される数値の監査
 7 経済産業省モデルによるブランド価値評価と監査
  (1) 透明性ある会計的ブランド価値評価モデルと監査
  (2) モデルへの代替数値利用の可能性と監査
 8 ブランドの開示方法と監査
  (1) 「報告書」の示すブランドの開示方法
  (2) ビジネス・リポーティングと監査
 9 無形項目,ブランドの監査と監査期待ギャップ問題
 10 おわりに

第10章 監査期待ギャップの国際的階層化
     ―エンロン事件とその対応―
 1 はじめに
 2 エンロン事件
  (1) エンロン社の概要
  (2) エンロン事件の概要
  (3) エンロンに対する監査人の対応
 3 「会計不信」の増大
  (1) ワールドコム事件
  (2) 企業改革法とPCAOBの設置
  (3) 監査への影響
 4 アメリカ監査への「期待」とそのギャップ
 5 おわりに

第11章 監査期待ギャップ問題の展開
 1 はじめに
 2 現代の企業不正と監査期待ギャップ
 3 「監査の爆発」:監査の自己増殖機能
 4 監査概念の限定
 5 「監査」の要求と会計の変化
  (1) 「監査」の要求の高まり
  (2) 会計の変化と監査の対応
 6 監査期待ギャップの理解とその本質
    ―監査の拡大とギャップの拡大から―
 7 監査期待ギャップ問題の将来への視座
    ―継続監査の可能性と監査期待ギャップのグローバル化―

参考文献