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会計観の対立と混合会計

松本 敏史 著


第1刷発行日2024/03/30
判型A5判
ページ数223ページ
本体価格3,200円
定価
在庫状況在庫あり
ISBN978-4-8394-2200-4
内容
 引当金の個別項目が抱えている論点を考察してきたが、その多くの論文が収益費用中心観と資産負債中心観の対立の観点から引当金会計の個別問題を分析したものとなっている。このようなアプローチを採ったのは、異なる思考のもとに形成される会計理論や会計処理方法を比較することでそれぞれの計算構造がより闡明になると考えたからである。また現実にも財務会計の世界ではこの2つの思考を体現した会計モデルが形や名称を変えながら様々なレベルで対立を繰り返しているからである。2つの会計思考の究極的な違いはいったい何なのか、そしてそれぞれのシステムが生み出す会計情報はいったい誰にとって有用なのか、これらの点が改めて問題になる。

目次
第1章 対立的会計観の諸相とその相互関係
 第1節 はじめに
 第2節 2つの中心観と期間損益の計算形式
 第3節 2つの中心観の実質的意義
  1 収益,費用の定義に対する2つの中心観
  2 2つの中心観における名目勘定の内容
  3 2つの中心観における実在勘定の内容
 第4節 給付費消計算と収益費用計算

第2章 対立的会計観における費用認識の論理
 第1節 はじめに
 第2節 費用認識領域の空間的差異と時間的差異
  1 空間的差異
  2 時間的差異
 第3節 将来発生費用の認識論理
  1 原因発生主義
  2 収益費用対応の原則
 第4節 支出費用説の展開
  1 2つの収益費用計算
  2 企業会計原則注解注18と支出費用説
  3 収益費用中心観と支出費用説
 第5節 費用認識論理の相互関係

第3章 阪本・番場・内川引当金論争の対立構造
 第1節 はじめに
 第2節 論争の展開
  1 論争の背景
  2 引当金繰入額は未発生費用か,それとも見積費用か
  3 減価償却引当金は引当金か否か
  4 賞与引当金・退職給与引当金の性格規定
  5 修繕引当金・特別修繕引当金の性格規定
  6 未発生費用の計上と費用認識基準
  7 引当金の貸借対照表上の性格
 第3節 引当金会計理論のフレームワーク
  1 財貨動態と貨幣動態
  2 収益費用中心観と資産負債中心観
  3 2つの中心観と引当金の処理方法
 第4節 論争の評価

第4章 債務保証損失引当金と債務保証引当金
 第1節 はじめに
 第2節 債務保証損失の発生過程
 第3節 現金主義的処理
 第4節 発生主義による処理―債務保証損失を見積計上する場合―
  1 将来の債務保証損失を見積計上
  2 債務保証損失を見積計上,求償権を未収金として計上
  3 債務保証損失を見積計上,弁済義務を未払金として計上
  4 債務保証損失を見積計上,弁済義務と求償権を同時に認識
 第5節 発生主義による処理―債務保証額を見積計上する場合―
  1 IAS37号の引当金規定と債務保証取引
  2 債務保証額の見積もりと債務保証引当金の計上
 第6節 新たな会計処理方法の提案―対照勘定の段階的取り崩し―
 第7節 むすび

第5章 収益認識プロジェクト
     ―理論と慣習の相克―
 第1節 はじめに
 第2節 収益認識プロジェクトの目的と基本的スタンス
  1 収益認識プロジェクトの発足
  2 実現稼得過程アプローチの特徴
  3 設例による資産負債アプローチの優位性の説明
 第3節 資産負債中心観による収益認識モデルの構築
  1 資産・負債の変動と認識の対象
  2 収益概念の検討
  3 契約上の権利と義務
 第4節 現在出口価格アプローチと当初取引価格アプローチ
 第5節 欧州の動向
  1 EFRAGによる代替案の提示
  2 決定的事象アプローチ
  3 継続アプローチ
  4 4つのアプローチの特徴
 第6節 IFRS15号の発表
  1 現在出口価格アプローチの放棄
  2 IFRS15号の特徴
 第7節 おわりに

第6章 製品保証取引と収益認識
 第1節 はじめに
 第2節 IFRS15号の成立過程における製品保証会計の変遷
  1 収益認識プロジェクトのスタート時における製品保証会計モデル
  2 「討議資料」(2008年)における履行義務の認識モデル
  3 「公開草案」(2010年)における履行義務の認識モデル
  4 IFRS15号(2014年)と引当金方式
  5 IFRS15号の成立までに提示された処理方法と帰着点
 第3節 製品保証引当金と製品保証前受金
  1 引当金方式
  2 前受金方式
 第4節 製品保証業務の性格規定と収益認識

第7章 2つの会計観とキャッシュフロー
     ―非連携モデルの構造分析―
 第1節 はじめに
 第2節 固定資産除去債務会計の諸形態とその特徴
  1 原価実現会計の処理例
  2 公正価値会計の処理例
  3 混合会計の処理例(SFAS143号の場合)
 第3節 基礎概念の整合性と情報のレリバンス
 第4背ry 非連携モデルの展開

第8章 IFRSの情報特性と日本の選択
 第1節 はじめに
 第2節 3つの個別会計基準の特徴
  1 引当金会計基準
  2 収益認識プロジェクト
  3 無形資産の会計基準
 第3節 IFRSの会計モデル
 第4節 混合会計の構造と情報特性
  1 混合会計の意味
  2 混合会計の情報特性
 第5節 個別会計基準と稼得利益計算
 第6節 むすびに代えて

索引